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恋人の目には (7) 

心の痛み、それはまったくユニークな感情に思える。その痛みの元がよりなじみ深いものになるにつれ、時間を経て、痛みは最終的には薄れて行くが、完全に私たちの中から痛みが消えるということは決してない。それは、続く数ヶ月におけるクウェンティンについてもあてはまった。

彼は、世界中の白人男性同様、その後も変化し続け、自分のおかれた環境の現実に順応していった。当初感じた、恐怖感に由来する鋭い心の痛みは、やがて、鈍いズキズキした痛みへと変わった。

クウェンティンが恐れているものは、数多く存在した。

グレッグは今も自分に心を惹かれてくれているのだろうか? 世界は、この変化にどういった反応を示すのだろうか? 友人や同僚たちはどうなのだろうか? 例の生物化合物が少し変えられていて、ベル博士が意図したよりも悪い変化が出てきたら、どうしたらよいのか? 

だが、やはり、一番の心配はグレッグのことだった。

ベッドでは、グレッグが支配的である。これは確かだ。クウェンティン自身は正確には従属的とは言えなかったが、グレッグが支配的であることが、ふたりが惹かれあった中核部分にあったのは本当だ。日常生活では、ふたりの間で継続的に主導権争いがある。だが、寝室ではふたりの役割は明瞭だった。クウェンティンが下で、グレッグが上なのである。その他の点では、ふたりは支配力を求めて競い合った。

もちろんグレッグは隠そうとしていたが、身体の変化は、クウェンティンの精神に影響を与えたのとちょうど同じように、グレッグ自身の精神にも影響を与えていた。彼は、様々な局面で支配的立場を主張しようともがいていた。だが、日増しに自信が揺らぎ始め、とうとう、ほぼすべてのことについて、決定を下そうとしても疑問を感じてしまうまでになっていた。決めようとしても、ためらってしまう。そして、毎日、その状態が悪化していく。

やせ細り、身体が縮小していくのにつれて、グレッグはますます自分の意見を引き下げるようになった。クウェンティンは、グレッグが夜に寝室でひとり啜り泣きしているのを知っていた。そんな時、クウェンティンは、寝室に入って恋人を慰めてあげたいと切に思うのであるが、グレッグは弱みを見せるのを拒むだろうとも分かっていた。たとえ、頬に涙を伝わせていても、頑として認めないだろうと。

いや、それも違う。恋人であり親友であるグレッグを、本当に、心から助けてあげたいと思っているが、そういうふうにすると、かえって、より多くの心の痛みを与えてしまうことにしかならないのだ。

そう思うがゆえ、クウェンティンは、悲しみにくれるグレッグを何も言わずにそっとしていたのだった。時がたてば、そしてこの変化に慣れていけば、心理的影響は弱まっていくだろう。そう期待しながら、ただ黙って見守ることにしたのだった。

日々が過ぎ、さらに2ヶ月が過ぎた。

ふたりの体格は落ち着き始めた。クウェンティンは、結局、身長おおよそ162センチ、体重52キロになった。一方のグレッグは、前はクウェンティンより若干大きかったのだが、結局、身長155センチ、体重47キロになった。グレッグは、見るからに、ほっそりとして、繊細な印象に変わっていた。

そして、ベル博士の手紙が警告していたように、ふたりの体形も大きく変わっていた。男性的なきゅっと引き締まったお尻や幅広の肩は姿を消した。その代わりに、女性的な細いウェスト、幅広の腰、丸いお尻そして小さな肩が現れていた。

ある夜、クウェンティンはベッドで横たわりながら、ベッドに入る支度をしているグレッグを見ていた。グレッグはだぶだぶのトランクスだけを履いた姿でいた。そんな彼の姿をクウェンティンはじっくりと観察した。

乳房がないことを無視したら、本当に、小柄な女性の身体としか思えなかった。お尻は小ぶりとは言え、丸く盛り上がり、お腹のあたりも若干曲線を帯びていて、女性的だった。そしてクウェンティン自身、同じような女性的体つきになっているのを知っていた。

グレッグの身体が良くないというのではなかった。そうではなく、今のグレッグの身体はクウェンティンが好む身体ではなくなっているということ。クウェンティンは、大きくて逞しい身体をした男が好きなのだ。「大きくて逞しい」は、今のグレッグの身体を描写するのに使う形容詞とはもっともかけ離れた言葉だろう(それを言ったら、クウェンティンの身体についても同じなのだが)。

ベッドに横たわりながらグレッグを見ていたクウェンティンは、あることに気づき、何かに頭を強打された気持ちになった。

とはいえ、これは突然起きたことではない。ふたりは、この4週間、まったくセックスをしていなかった。だが、この瞬間、クウェンティンは、自分が自分の恋人にまったく性的に魅力を感じていないことに気づいたのだった。これに気づき、彼は恐怖を感じた。そして、こんなことは忘れようと思った。

グレッグもベッドに入り、横にきたのを受けて、クウェンティンは、唯一すべきことと彼が思うことを行った。自分がグレッグに惹かれていないという考えを頭の中から消したかった。なので、自分は間違っていると証明しようと思ったのである。

両手をグレッグのお腹の方へ伸ばし、滑らかで柔らかい肌に触れた。それから指をお腹の曲線に沿って軽く走らせた。身体を起こし、グレッグの胸に顔を寄せ、彼の膨らんだ乳首にキスをし、舌先でチロチロと弾いた。

その努力は報われ、小さな喘ぎ声が聞こえてくる。女の子のような喘ぎ声。

クウェンティンは小刻みにキスを続けながら、グレッグの乳首から首筋へと上がった。そして、ふたりの唇が触れあう。ふたりは情熱的に唇を密着させた。クウェンティンの手は、グレッグのトランクスの中へと忍び込んだ。

グレッグのペニスを見つけるのに少し時間がかかってしまった(こんなに小さいとは!)。クウェンティンはようやく見つけた、その柔らかいモノをいじり始めた。何分か擦り続けたが、実りはなかった。グレッグはとうとう、イライラした溜息を出し、クウェンティンを押しのけた、くるりと寝返り、向こうを向いた。クウェンティンはグレッグが小さく啜り泣く声を聞いた。

「どうしたの? 僕たちはてっきり……」 とクウェンティンは話し始めた。

「ダメなんだよ! クウェンティン、君も知ってるはずだ。もう、勃起できないんだ。それに勃起したとして、僕に何ができる? たった5センチだぞ? 君は何も感じないだろう」

「そんなの気にしないよ。ただ僕は……」

「でも、僕が気にする!」 グレッグは荒い声でそう言い、クウェンティンの方に向き直った。「こんな男がどこにいるんだ? 僕は好きな人にすら……」 彼の声は小さくなった。

クウェンティンは人差し指を立て、グレッグの唇に当てた。

「ふたりで切り抜けるんだ」

「でも僕は……」

「同じことを言って? ふたりで切り抜けるんだ」

「ふたりで切り抜ける」 とグレッグはくぐもった声で言った。

じゃあと、クウェンティンは、わざと無理に笑顔になった。「アレを使わなくても、何かちょっと楽しむ方法を見つけられると思うよ」

クウェンティンはグレッグの上に這い上がり、彼の脚の間にひざまずいた。そうしてグレッグのトランクスを引っぱり、脱がし、それから頭を下げて、グレッグのペニスを口に含んだ。

柔らかいままだったが、精一杯、舐め吸いを続けた。何分か続けたとき、クウェンティンはあることを思い出した。あのベル博士の声明文だ。アヌスが前より敏感になると言っていた。そこで彼は舐め吸いを続けながらも、指を出し、グレッグの中に滑り込ませた。

「あぁッ!」 とグレッグが喘ぎ、肛門をヒクつかせた。クウェンティンの指を絞る動きをしている。

クウェンティンは指を出しては入れを繰り返した。何かヌルヌルしたものを感じた。多分、天然の潤滑液だろうと思った。そして、今度は指を2本にした。グレッグのペニスが反応し、勃起して、5センチほどになった。

その、たった2分後、グレッグはクウェンティンの口の中に射精した。クウェンティンは驚いた。その味が、以前の塩辛い味ではなかったから。彼のザーメンは、甘かったと言っても良かった。

クウェンティンはグレッグの上に覆いかぶさり、グレッグの腕の中に抱かれた。

「分かっただろう? 方法を見つけられるって、僕が言った通り」

クウェンティンはそう言って、恋人にキスをした。それから、仰向けになって脚を広げた。

「今度は君の番。君ができることをして見せてくれ。セクシーなグレッグ!」

セクシーな、とは言ったけれど、クウェンティンは正直ではなかった。グレッグのことをとても魅力的だと思う人がいるのは知っているけど、クウェンティン自身は、そう思っていない。それでも、彼は嘘をついた。こういう嘘をつくことに慣れていくのだろうと思った。

グレッグはニヤリと笑い、クウェンティンにしてもらったことと同じことをしてあげた。グレッグの細い指をアヌスに入れられながら、クウェンティンは思った。確かに、これには慣れていくことができそうだと。

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[2015/09/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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