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デビッド・ジョーンズとベル博士の追跡 (8) 

その2時間後、ジョーンズは女性のローブを着て、ラクダの背中に乗り、サハラ砂漠を進んでいた。サミールがあんな短時間で見つけることができたローブはそれだけだった。

これからほぼ1週間は砂漠を移動することになる。そこでジョーンズは、それに応じた荷造りをした。

夜に移動し、昼は眠った。毎朝、テントを張る前に、自分の身体に起きた変化をチェックした。毎日、一定の割合で確実に体重が減っている。だが、尻は膨らみ始めていたし、腰も広がり始めていた。はっきりとは目立たないが、彼は気づいていた。

6日後、ジョーンズは収容施設に着いた。コンクリート製の巨大な施設だった。外見は何年も廃墟になっていたように見える。

ジョーンズはラクダを施設に近づけ、ドアの近くで降りた。ドアを試してみた。ロックされていた。

彼は小さなキットを出し、挿しこんだ。ドアは簡単に開いた。ポケットから懐中電灯を出し、施設に入った。

中を進みながら、ジョーンズは、第一印象が正しかったと思った。ここは、しばらく使用された後、廃墟とされたものだ。床は、厚い埃で覆われていた。彼は、ベル博士の足取りに関する手掛かりを得ようと、探索を始めた。

フィリップの元の寝室を見つけた。いまだに家具類は置かれたままだが、衣類を探したものの、それはなかった。次にダンス・スタジオを見つけた。さらに個室もいくつか。キッチンには食材はなかった。そして最後にベル博士のオフィスと思われる部屋を見つけた。中に入ると、ファイルのキャビネットがあった。

キャビネットの中を捜すと、ベル博士の経理記録が出てきた。これを調べるのは、時間も場所も都合が悪い。デビッドは部屋を出て、ナイロン製の大きな袋を持って戻ってきた。そしてキャビネットの中身を全部袋の中に入れ、探索を続けた。デスクで書類や通信文を見つけたが、それ以外には、この部屋では特に目立ったものはなかった。もっと言えば、収容施設全体でも、他には目立ったものは見つけられなかった。

ジョーンズは袋を持ち上げたが、その重さに危うく転びそうになった。自分は以前と異なり、今は痩せて小さくなっている。当然、筋力も減っている。それを思い出し、袋を抱えるのは諦め、床を引きずることにした。袋を引きずりながら収容施設の外に出た。袋をラクダの上に乗せるのには、ひと苦労したが、なんとかやり遂げた。

帰りの移動では特に変わったことはなかった。ただし、一度、大きな砂嵐に遭遇した。ジョーンズは、フランス軍が破棄したと思われる要塞に入り、そこで嵐をやり過ごした。だが、そのことにより、ほぼ3日の遅れが出た。

その3日間、彼は施設から取ってきた書類を調べた。そして、このベル博士に関わった人間が、予想以上に多いことに驚いた(もっとも、関わった人間の大半は、実際には、どんな事件に関わっているかまったく知らなかっただろうと推測できた)。書類の検討を通じて、ジョーンズはわずかながら有望と思われる手がかりを得ることができた。

砂嵐が去り、デビッドは再び帰路に着いた。サミールの元に戻ったのは、出発してから16日後だった。戻るとすぐに、彼は書類を箱詰めし、サミールに、それを本部に送ってくれと頼んだ。

「さてと、シャワーを浴びて、ちょっと眠ることにしよう」 とジョーンズは言った。

サミールはジョーンズをバスルームに案内した。ジョーンズは、中に入りローブを脱いだ。彼は意図したよりも長くシャワーを浴びた。長旅の後で快適だったからだ。

シャワーから出た後、鏡を見た。自分の身体は、最後に見た時に比べると、劇的に変化していた。身長はおおよそ160センチくらいだし、体重もせいぜい50キロ程度だろうと推測した。ベル博士の他の犠牲者たちに比べると、身体の曲線は目立たない。むしろ、痩せて、柳を思わせるしなやかな身体を思わせた。そうは言っても、曲線がまるでないということではない。ウエストは細く、腰は膨らんでいた。何と言うか、腰のあたりが長く伸びたような印象があった。

そしてペニス。元々大きなペニスをしていたわけではなかったし、実際に測ったこともなかったが、今の彼のペニスは5センチ足らずで、驚くほど小さくなっていた。

身体の変化は、ほぼ終結に近づいたと見てよいだろう。さらに身体が小さくなることだけは起きないでくれと願うだけだった。

*

その2日後、デビッドはアメリカに戻った。そして本部に直行した。本部に着くと早速、ウィルソン女史が彼を出迎えた。

「あなたが戻ってくるのを待っていたのよ。会議室に来て」

デビッドは頷き、彼女の後に続いて歩いた。今や、ウィルソン女史の方が彼よりかなり背が高くなっていた(ヒールを履いているのでなおさら)。

会議室に入り、デビッドは少し驚いた。部屋にはオーウェンズ氏、ダンズビー氏、そして知らない黒人男性がいた。ウィルソン女史と椅子に腰を降ろしつつ、デビッドは、ふたりの白人男性の姿の変化にどうしても気が取られるのだった。

オーウェンズ氏は、60歳近くになっているが、そもそも、小柄な男性だった。それが今は、153センチほどになっており、はっきりと小さくなった印象があった(ひょっとすると140センチ台かもしれない)。顔つきも明らかに女性的になっており、世界で有数の秘密組織を指揮する人物というよりは、スーツを着たおばあちゃんといった風貌になっていた。

ダンズビー氏も小さくなっていたが、印象としては、脂肪分が減ったという感じが強い。ベル博士の化合物は、元々、太っていた人間については、その部分を変えることはないようだった。ダンズビー氏は、太った中年女性のような風貌になっていた(乳房があれば、完璧にそう見えるだろう)。髪の毛すら、前より増えている。

「デビッド、掛けたまえ」とオーウェンズ氏が言った。「ダンズビー君とウィルソン女史については、すでに知ってるね。向こうにいるのは、フランク・サイクスだ」

デビッドは会釈をした。

「それで、何が分かった?」 とオーウェンズ氏が続けた。

ジョーンズは調査結果をすべて詳細に報告した。一通り報告を終えると、「これから、他の手掛かりがないか、これらのファイルの検討に入るつもりです」 と言った。

サイクスが口を挟んだ。「それで、君は、変化についてはどう対処してるのかね?」

「何とかやってますが?」 とジョーンズは答えた。「仕事は続けられますよ。ご懸念の点がその点なら、お答えしますが。それだけでしょうか? 私は仕事に戻りたいので」

「いや、まだダメだ」 とオーウェンズが言った。「政府は我々に他の仕事もするよう要求したのだよ。その仕事とは、影響を受けた男性が新しい状況にスムーズに移行できるように彼らを助けるという仕事だ。政府は、メキシコで発生しているような暴動を死ぬほど恐れているのでね。そこでだ。君は、みんなに起きていることに最も精通している人間だろう。我々は、そういう君の意見を聞きたいのだよ」

それを聞いて、ジョーンズは心のガードを緩めた。

「率直に言って、多くの人には、ちょっと背中を押してやるだけで良いでしょう。自分が感じてることを進めても良いのだと思わせるような何かがあれば充分だと思います。基本的に、我々がしなければならないことは、そういう男たちに、自分たちはもはや本当の意味での男ではなくなったのだと理解させることです。何か他の存在になったのだと理解させることです。そして、彼らにそういう存在であることを受け入れさせる必要があります」

「どうやって?」 とサイクスが訊いた。

「私が見てきたすべての事例において、極めて明瞭になったことがあります。それは、例の化学物質は、白人男性を、他の男性に心が惹かれるようになるまで、変えてしまうということ。もうひとつ、彼らにとってアナルセックスが非常に気持ち良いものであると判明していきます。このふたつがあいまって、相乗効果として、彼らは、何と言うか、本物の男たちにとって自然なセックス相手となっていくのです。したがって、我々は、彼ら白人男性に、そういった感覚を追及していっても構わないのだと思わせる必要があります。もし可能ならの話しですが、我々は、彼ら白人男性に、むしろ、そういう方向に向かうことを推奨すべきでしょう」

その話しを聞いて、皆、しばらく黙りこくっていた。その様子を見てジョーンズが切り出した。

「それは難しいかもしれませんが、可能であると私は思っています。言葉に言うほど単純なことではないのは確かですが、私はちょっとプランを考えています」

そしてジョーンズはそのプランの概略を説明した。それは3つの戦略からなるプランだった。ひとつ目は、白人男性に対して彼らが自分に対して抱く男らしさの概念を攻撃する戦略、ふたつ目は白人男性に新たな性衝動を追及しても良いのだと思わせる戦略。そして3つ目は、白人男性を他の男性から分離することを推奨する戦略であった。

最初の戦略が最も難しく、したがって最も複雑になるだろう。エージェンシーは、一連の記事をインターネットや様々な雑誌に仕込むことにする。そのような記事は、白人男性に対して、彼らは本物の男とはまったく異なる存在なのであり、この違いをしっかりと受け止めるべきなのだと納得させるのを意図している。記事の内容としては、白人男性はどういう服装をすべきかといった内容から、どのようにしたらセックス・パートナーを獲得できるかといった内容に至るまで、様々な内容を扱わせる。雑誌やネット記事に加えて、ファッション業界やエンタテインメント業界にも、その方針に合わせるよう仕向けることができるとサイクスは請け合った。様々なメディアを通して、白人男性を女性に極めて似た存在として描かせるように仕向けるのである。

ふたつ目の戦略は、よりトリッキーであり、第一の戦略と絡み合っている。概略的に言って、ポルノ産業を配下につけるとこが必要になる。様々なポルノ・メディアを通じて、白人男性が女性とセックスしようと頑張るものの、男性としては失敗に終わる描写、そして、白人男性が、本物の男性に対する従属的なセックス・パートナーとなり、そこに喜びを見つける描写を展開し、それを人々に見せる必要がある。

最後に、国の立法府を通して、白人男性と他の男性とを分離させる政策の法制化をプッシュする。トイレ、着替え室、(学校での)ロッカールームなどでは、白人男性と他の男性とを分けてそれらを設置しなければならないとする法律を定めさせる。それはふたつの目的にかなうだろう。ひとつは、その法律により、白人男性が性的に攻撃されることを防ぐことができる。だが、それよりも重要な目的として、その法律により、白人男性に、彼らが本物の男性にとっては魅力的に映っていること、それゆえ、分離する必要があることを認識させることになるだろう。

ブレインストーミングが終わり、会議も終わりにさしかかった時、オーウェンズが言った。

「ジョーンズ君、もうひとつあるんだ。この仕事を続けるに際して、我々は政府系の全職員は適切な服装をすることが求められているんだよ。つまり、君も新しい服装をしなければならないと言うことだ」

「はい、分かりました」とジョーンズは言った。その時、あるアイデアが彼の頭に浮かんだ。

「我々は彼らの呼び方を変える必要があると思います。ボイと呼んではいかがでしょう? BーOーIです。そうすれば、いちいち彼らを白人男性と呼ばなくても済むし、より簡単になります」

*

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[2015/09/26] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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